核も基地も戦争もない平和で公正・持続可能な世界へ、日本と世界の女性の共同と連帯をひろげる力に
グアム平和正義連合、われらグアム人、FITE CLUBから11人参加
日本平和大会in沖縄
グアムはアメリカに組み込まれていない領土で、国連の脱植民地化特別委員会によって16の非自治領土の一つとされています。最初にスペインの植民地に、第二次大戦中日本が占領、戦後アメリカの準州となりました。アメリカ議会に議員を1名選出していますが、議決権はなく、アメリカ大統領への投票権もない、植民地状態に置かれています。
グアムの先住民チャモロ族は、4000年以上前に島に移り住んできました。現在の総人口は18万人、チャモロ族は約39%を占めています。グアムは最長で縦30マイル(約48.3㎞)、横が12マイル(約19.3㎞)の小さな島です。米国防省はすでに島全体の27%に相当する3万5938エーカー(約145.4平方キロメートル)の土地を支配しており、すべての個人地主が所有する土地の合計より広いのです。
私たちは、8000人の米海兵隊とその家族を沖縄からグアムに移転させる大規模な軍備増強計画を阻止する運動で連帯し、たたかっています。移転は環境、文化、社会構造、生活の質などあらゆる面で破壊的な影響をもたらします。
過去5年間、政治力や経済力のある少数の人々が、軍備増強はグアム社会にとって絶好の経済チャンスだと宣伝する一方、米国防省は「善隣」戦略を行使してきました。2009年11月、国防省は1万ページもの環境影響評価素案(EIS)を発表。たいていのEISは300ページ程度で45日間のパブリック・コメント期間が定められていますが、グアムについては「善隣」方式により、1万ページ以上の内容についての見直しや意見提出の期間はわずか90日でした。
EISでは、基地移転の環境への有害な影響が指摘され、その対処も基地移転費に上乗せされます。日米両政府は米海兵隊の移転に伴う費用の6割を日本側が負担することで合意、当初は日本側の負担額60億ドルとされていましたが、環境対策費など含めると100億ドルを超えるとの指摘もあります。普天間基地の「移設」が決着しないと海兵隊の移転は始まらないのですが、日本政府はすでに負担額の支払いを始めています。そのお金は手つかずのまま宙に浮いた状態です。これは辺野古のみなさんのたたかいの成果でもありますが、日本国民の税金がどうなっているのか、人々に広く知らせるべき問題です。
軍備増強はグアムに何をもたらすでしょうか。国防省は米軍の住宅や活動用に680エーカー(約2.8平方キロ)、実弾演習複合施設建設のために1090エーカー(約4.4平方キロ)が必要だと主張しています。2000エーカー(約8.1平方キロ)以上のジャングルが破壊され、1300エーカー(約5.3平方キロ)の居住環境が危険にさらされることになります。
実弾演習場の候補地は元チャモロの村と墓地のあったところで、「われらグアム人」とグアム歴史保存会が原告となり、海軍を相手に裁判を起こしました。大半の人々が国防省はこれ以上土地を接収すべきでないと考えており、特に古いパガット村の接収には、政治家も一致して反対しています。先週、国防相はパガット村を演習場の候補地とすることを見直すことに決めたとの発表がありました。予定されている実弾演習場は住宅から2分の1マイルしか離れておらず、120軒の家で銃声が聞こえますし、訓練の15%は夜間に実施されます。演習場は1週間7日使用可能、国防省が住宅に防音工事をするとは思えません。旭川医大の2000年の調査でも明らかなように、航空機の爆音は睡眠障害、聴力喪失、低体重児の出産率の増加、疲労、神経症、その他子どもへの悪影響など身体的、精神的影響を及ぼします。
EISはグアムの医療機関の多くがすでに人員不足になっていることを指摘しています。グアムの学校は最低でも12%の生徒増に対応しなければなりません。グアムに42ヵ所ある学校はすべて「低所得者向け」で、3万1000人の生徒のうちの60から65%が給食費免除あるいは減額の対象者です。毎年、300人以上の教員採用が必要です。
住宅不足も深刻です。つい数週間前、数千人のグアム人がグアム住宅都市整備局前に長時間並びました。連邦住宅援助金の支給を受けるためです。グアムの住宅費は今や史上最高のレベルで、EISは労働力や建材や住宅の不足が、住宅費をさらに高騰させることを認めています。ホームレスの増加、人口過密や違法住宅の問題が起こるでしょう。低・中所得世帯は、家を建てたり、買ったり、借りたりすることができなくなります。しかし軍備増強のピークを過ぎると、今度は住宅の価格が下落し、地主やデベロッパー大きな損失を被ることが予測され、多くの空き家ができ、荒れ果てていくでしょう。国防省とEISはこのようなグアムの住宅市場への影響にはまったくふれていません。
EISが取上げていないデータとして、異常に高いグアムの発がん率や自殺率があります。米軍に入隊し死亡するグアム人の割合も他の州より高いのですが、先住民のチャモロ族の自殺率は驚くほどの高さです。
しかし、私たちは希望を持っています。2ヵ月ほど前、商工会議所の青年部が経済の安定と政治的地位についてのフォーラムを開催、現状を変えなければならないと結論づけました。数週間前にグアム大学での、グアムの国際人権弁護士のジュリアン・アゴンが脱植民地化と自分たちの政治的地位を自分たちで決める権利について講演し、会場は満員でした。2011年5月、ハワイの判事は、パガット村を救う訴訟で被告側の差し戻し請求を却下。私たちは、数週間後に、同じ判事が棄却の申し立てを却下することを期待しています。
「われらグアム人」は裁判闘争に加え、軍備増強によって危険にさらされる場所での情宣活動ハイキングや「プルテヒ・ヤン・ディフェンディ」という啓発キャンペーンも始めました。Tシャツ、ステッカーを配ったり、地元のアーティストと協力してバス停に絵を描いたりして、私たちが愛するものを保護し守る意思を伝えるキャンペーンです。
チャモロ族には、「不正義と知りながら自らにそれが行われることを許してしまうことのほうが、大きな誤りである」ということわざがあります。軍事基地が置かれ不正義がまかりとおることを許さず、私たちはたたかっていきます。